医療終末期に公正証書遺言を作成した事例
【80代女性】
事案:遺言書の相談、作成
相談内容
相談者さんは、ご縁がなく独身で、子どもがいませんでした。
相談者さんには、姉と弟がいますが、高齢でたまに電話で連絡を取り合う程度でした。
先に亡くなった一番下の弟に娘がいましたが、一人は疎遠でした。
もう一人の弟の娘は、相談者さんの近くに住んでおり交流がありました。
ある時、相談者さんは、医師から癌で余命宣告を受けました。
それ以前に癌であることはわかっていて、通院、治療を行なってきましたが、突然癌が進行したのでした。
癌であることがわかってから、体調が優れないことが多くなり、通院や治療も一人では大変だったので、近くにいる姪を頼るようになりました。
姪はとても優しく献身的に相談者さんを支えてくれているそうです。
そこで、相談者さんは、感謝の気持ちから、姪に財産をすべて相続させたいと考え、弁護士を頼って相談にこられました。
対応
もし遺言を作成しなければ、相談者さんの姉や弟、疎遠の姪も法定相続人の立場であるので、支えてくれた姪に財産すべてを相続させることはできません。
支えてくれた姪以外の方が全員相続放棄をしてくれれば、支えてくれた姪が財産をすべて相続できることになります。
しかし、相続放棄をしてくれるとは限りませんし、相続放棄は、口頭で「いらない」というだけではダメで、法律上、家庭裁判所に申述という手続が必要です。
そこで、相談者さんの希望を実現するため、遺言を作成することになりました。
しかし、ご自分の身がいつどうなるかわかりませんので、早急に遺言を作成する必要がありました。
遺言には大きく、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は自分で書いて作成するというものですが、法的に不備があると無効になるリスクがありますので、慎重に作成する必要があります。
相談者さんは、ほぼ寝たきりになっており、自筆で作成することも難しい状況でした。
そこで、公証人が遺言の内容を聞いて、遺言者に代わって遺言書を作成する、公正証書遺言を作成することにしました。
さっそく、弁護士は、その依頼を受け、相談者さんの意向を聴き取り、遺言書の案を作成。公証人の手配や証人二名の手配をし、速やかに作成に向けて段取りをしていきました。
公正証書の作成は、基本的には、当事者が公証センターに赴いて作成するのですが、本件のような場合には、病院や施設、ご自宅など当事者のもとに公証人に出張してもらうという方法があります。
弁護士から公証人に相談者さんの状況を説明し、近い日に出張していただく日程を調整し、相談者さんは無事、施設で公正証書遺言を完成することができました。
結果
今回のケースでは、相談者さんの希望どおりに、献身的に支えてくれて姪に全財産を譲ることができ、相談者さんは安心され、治療に専念することができるようになりました。
弁護士から
今回のケースのポイントは、早急に遺言を作成することにありました。
また、ご自分で作成することが無理な状況でしたので、弁護士に早く頼み速やかに動いてもらったのがよかったと思います。
このように、残された時間が限られる状況においても、ご希望に応じた遺言を作成するために、あきらめずに、専門家である弁護士にご相談ください。
※これらの解決事例は実際に当事務所での取扱事案ではありますが、個人や事案の情報を保護する目的で一部変更をしている個所もあります。