任意後見契約と死後事務委任契約を締結した事例
【70代女性】
事案:任意後見、死後事務委任
相談内容
相談者さんは、早くに子どもを亡くされ、その後、ご主人も亡くされ、身寄りのない状態になりました。
周りに友達は多く、充実した毎日を送っていましたが、将来の認知症が心配でした。
今は賃貸アパート暮らしをしていますが、いずれは施設で世話になり穏やかな生活を希望されていました。
施設に入るためには契約が必要ですが、認知症の症状が出てきたときに契約を結べるのか不安でした。
また、自分が亡くなった場合、葬儀や役所の手配、荷物の処分、納骨など先々のことを考えると悩みが尽きませんでした。
そこで、相談者さんは、自身が元気で判断ができる今のうちに、信頼できる弁護士を探し、老後や亡くなった後のことをお願いしたいとのことで相談に来られました。
対応
弁護士は、相談者さんから現在の状況や将来の不安や希望を一つ一つ丁寧に聴き取り、まず、任意後見契約を結びました。
任意後見契約は、ご自身の判断能力が不十分になった時に備えて、自分の生活や財産の管理に関する事務を行ってもらうように、あらかじめ信頼できる人に依頼しておく契約で、いわば後見人就任を予約するようなものです。
それと同時に、葬儀や納骨、死後の後片付けに関して、死後事務委任契約も結びました。これは、弁護士がそれらを代わって執り行うための契約です。
契約締結後は、定期的に連絡を取り合い、相談者さんの近況をお伺いし、時には心配事に対して弁護士からアドバイスをしました。
相談者さんは、数年後、認知症が進み判断能力の低下が見られましたので、弁護士は、家庭裁判所に申立てをし、任意後見人に就任しました。
それからは、相談者さんの希望にできる限り沿った施設を探し、入所契約を結んだり、通帳等の財産をお預かりして管理をし、施設の利用料や病院代の支払等を代わりにしていきました。
さらに数年後、相談者さんは亡くなられました。
弁護士は、契約にしたがい、相談者さんの希望どおり、少人数の友人葬を執り行い、荷物の処分や役所等の手続を済ませ、ご主人や娘さんのいるお墓に納骨しました。
結果
今回のケースは、将来(老後や死後)への不安をお持ちの方が、将来をより安心して暮らすために、判断能力がまだ十分ある段階で、早めに弁護士に相談し依頼されたことによって、ご自身の希望により合致した将来の実現につながるものとなりました。
弁護士から
今回のケースのポイントは、判断能力が衰える前に、将来の備えができたということです。
誰しもが将来に対して様々な不安を持っています。
そのような漠然とした不安を一つ一つ解きほぐし、専門家である弁護士と一緒に考え対策を立てていくことで、安心した将来が実現できればと思います。
※これらの解決事例は実際に当事務所での取扱事案ではありますが、個人や事案の情報を保護する目的で一部変更をしている個所もあります。