任意後見人を交代した事例
【70代女性】
事案:任意後見、財産管理
相談内容
相談者さんは、ご主人を早くに亡くされました。子どもはいません。
将来、認知症になったり、身体に支障が出た時に備えて、有料老人施設に入居し、生活されていました。
ただ、財産面で、預金口座の管理や、施設利用料、病院代の支払などに不安をお持ちでした。
また、相談者さんには、仲の良い同年代の友人がおり、もしもの時に備えて、その友人との間で任意後見契約を結び、任意後見人になってもらえるようにしていました。
しかし、その友人も同じように年を取ります。それにつれて、将来、任意後見人を全うしてもらえるのか不安が出てきました。
そこで、相談者さんは、任意後見人を変更できるのか、今後の財産管理を専門家に頼めないかと弁護士のもとに相談に来られました。
対応
弁護士は、まず、相談者さんのご希望や意向を伺い、任意後見契約を結んだ友人の状況についてもお伺いしました。
その友人とも、友人が病気になったこともあって交流はだんだん減ってきていました。
また、相談者さんには姉妹や甥姪がいて、時々交流しており、会っている時は楽しく過ごすのですが、やはり姉妹たちには迷惑をかけたくないとの気持ちが強くありました。
結果
任意後見人の変更については、手続をふめば可能であることを説明しました。
具体的には、任意後見監督人が選任される前であれば、当事者の一方から任意後見契約を解除することができますが、解除の意思表示のなされた書面に公証人の認証を受け、これを相手方に内容証明郵便で通知することが必要で、通知が相手方に到達した時に解除の効力が発生します。
相談者さんご自身でこのような手続をすることは複雑で難しいと感じられたようで、任意後見人を変更する手続は、弁護士がサポートすることになりました。
そして、解除が済めば、当然任意後見人がいなくなりますので、相談者さんの希望で、弁護士との間で任意後見契約を結び直しました。
さらに、財産の管理についても、相談者さんの意向にしたがった財産管理委任契約を結びました。
具体的には、複数の預金口座のうち、相談者さん自身の手元には、日常生活等で使う分(日常生活等に必要なお金)プラスアルファのお金が入っている通帳を置き、その他のお金の多く入っている預金口座(通帳)の管理は弁護士に任せるという内容にしました。
相談者さんは手元の通帳にあるお金を使って生活し、その通帳の残高が少なくなってくれば、弁護士に連絡があり補充をしていきました。
入院費等のまとまったお金が必要な時には弁護士の管理する口座からお金を支払いました。
弁護士とは定期的に面談する機会を作り、弁護士から定期的に、管理している通帳のコピーとともに、預金残高や資料状況等の報告もされていました。
これで、相談者さんは、もし判断能力が落ちてきた場合には、弁護士に任意後見人になってもらえます。
また、必要以上のお金は弁護士に管理を任せ、定期的に報告もしてもらえるので安心できますし、振込み詐欺等に遭う心配もなくなりました。
気持ち的にも、多額のお金の管理をしなくてもよくなり楽になったそうです。
弁護士から
今回のケースは、信用している友人に任意後見をお願いし備えていましたが、その友人が高齢になり任意後見を全うできるとは限らなくなったというものでした。
また、財産の管理については、相談者さんの意向に合った管理の方法、つまり、必要以上に自分の手元にお金は置かず、弁護士による管理を併用するというものでした。
このように、弁護士は、相談者さんの意向に沿って、その生活や財産をできる限り守るために、柔軟かつ最善の方法を探し出して解決していきます。
もちろん、弁護士は、専門家でありかつ法的責任を負う者ですので、その責務を全うします。
※これらの解決事例は実際に当事務所での取扱事案ではありますが、個人や事案の情報を保護する目的で一部変更をしている個所もあります。