法定後見制度の3つの種類(補助・保佐・後見)について

コラム

 

法定後見制度とは、大きく分けて2種類ある成年後見制度のうちの一つであり、高齢者や認知症などによって判断能力が低下した方が、不利益を被ることなく安全に日常生活を送るための制度です。

この制度では、家庭裁判所によって選任された後見人など(補助人、保佐人、成年後見人)が、対象者(被補助人、被保佐人、成年被後見人)の利益を守るためにさまざまな支援を行います。

後見人などは本人に代わり、財産の管理や重要な契約の判断、日常生活の支援などを行い、本人の権利や財産を守る役割を担います。

これにより、本人が安心して生活できる環境が整い、家族や周囲の人々の負担も軽減されます。

弁護士が後見人となる場合などは、法律の専門知識を活かして、より適切かつ安心なサポートを提供できます。

 

法定後見制度には、判断能力の程度に応じて3つの種類が用意されています。

それぞれの特徴を以下にわかりやすく説明します。

 

 

1.補助(ほじょ)

 

補助は、日常生活においてある程度の判断能力を持ちながらも、重要な契約や財産の管理において自信がなく、部分的な支援を必要とする人を対象とした制度です。

たとえば、高齢者が身体的には元気で生活の多くを自分で行える一方で、不動産の売買やローン契約といった複雑な取引に関しては支援が必要な場合が挙げられます。

この制度では、本人の意向を最大限に尊重し、必要最小限の範囲で補助人による支援が行われます。

 

補助人の選任は裁判所によって行われ、選ばれる補助人は本人の家族や弁護士など信頼できる人物が指定されます。

補助人が支援する範囲は、本人の同意を得て具体的に設定されるため、本人の自立した生活を可能な限り尊重した運用が特徴です。

たとえば、財産管理のみを補助人に依頼し、日常的な生活費の出納や少額の買い物は本人が自分で行うといった柔軟な調整が可能です。

 

補助を利用することで、本人は安心して生活を送ることができ、不安を抱えるような大きな取引や契約についても冷静に対応できます。

また、家族にとっても、本人が適切な支援を受けながら生活できることで負担が軽減されます。

この制度は、本人の自主性を損なわない形で必要な支援を受けられる点が特に優れています。

 

 

2.保佐(ほさ)

 

保佐は、本人の判断能力が部分的に不足している場合に適用され、補助よりも広範囲な支援を必要とする場合に利用される制度です。

この制度は、日常生活においてはある程度自立しているが、大きな契約や財産管理の場面では自らの判断だけでは困難が生じるような状況を対象とします。

たとえば、高齢者が認知症の初期段階で、日常の買い物や少額の支払いは可能であるものの、不動産の管理や大規模な金融取引に関しては支援を必要とする場合に適しています。

 

保佐人は、裁判所によって選任され、本人にとって信頼のおける人物がその役割を担います。

保佐の特徴は、補助に比べて本人の行為に対する保佐人の同意が必要な範囲が広い点にあります。

たとえば、不動産の売却や高額な借入契約などの重要な手続きにおいて、本人単独での判断を避けることで、不利な条件で契約を締結するリスクを防ぎます。

また、必要に応じて保佐人が本人に代わり契約の締結や財産管理を行うことも可能です。

 

さらに、保佐制度では、本人の生活全般を見守る仕組みが強化されており、財産管理だけでなく、生活に関する総合的な支援が提供されます。

これにより、本人が安全で安定した生活を送れるようになり、家族も安心して日々の生活を支えることができます。

 

 

3.後見(こうけん)

 

後見は、本人が判断能力をほとんど失っている場合に適用される制度であり、補助や保佐に比べて最も包括的な支援を提供します。

この制度は、重度の認知症や知的障がい、精神障がいなどにより、本人が契約や財産管理を含む意思決定を自ら行うことが著しく困難な状況で利用されます。

後見の目的は、本人の財産と権利を全面的に保護し、日常生活を安全かつ安定的に送るための環境を整えることにあります。

 

裁判所は、後見人を選任し、本人の財産や生活に関する幅広い管理権限を与えます。

後見人の役割は多岐にわたり、銀行口座の管理や公共料金の支払い、不動産の管理や処分、施設入居に関する契約手続きなど、本人が自ら行うことが困難なすべての業務を担います。

また、後見人は、本人の福祉を最優先に考え、医療や介護サービスの利用に関する手続きも積極的にサポートします。

 

後見制度では、本人の利益を保護することが最優先とされるため、支援活動はより厳しい裁判所の監督下で行われます。

これにより、後見人による不正行為や本人の権利侵害が防止され、本人が不利益を被るリスクが最小限に抑えられます。

後見制度を利用することで、本人は生活の質を維持しながら安心して暮らすことができ、家族も大きな負担から解放されることが可能です。

 

 

法定後見制度利用のメリット

 

法定後見制度の3つの種類(補助・保佐・後見)を利用することには、多くのメリットがあります。

この制度は、高齢者や判断能力が低下した人々が、不利益を被ることなく安心して生活を続けるために設計されています。

それぞれの制度が提供する支援は、個々の状況や必要性に応じて柔軟に対応できるよう工夫されており、本人やその家族にとって大きな支えとなります。

 

まず、法定後見制度を利用することで、本人が重要な契約や財産管理において不利益を被るリスクを大幅に軽減できます。

たとえば、判断能力が低下しているために不利な契約を結ばされる恐れがある場合、後見人や保佐人が適切な判断を下し、本人を守る役割を果たします。

また、補助制度のように本人の判断能力がまだ残っている場合には、必要な範囲で支援を受けることができるため、自立を尊重した支援が可能です。

さらに、制度を利用することで、本人の財産や権利が法的に保護されます。

後見人や保佐人、補助人は裁判所の監督下で活動するため、本人に代わって行われるすべての行為が公正かつ適切であることが保証されます。

この監督体制により、本人が不正な取引や詐欺の被害に遭うリスクが最小限に抑えられます。

 

法定後見制度は、本人が安心して生活を送れる環境を提供します。

たとえば、後見制度では後見人が生活全般を支えるため、本人が医療や介護サービスを適切に受けられるよう手続きを行います。

保佐や補助の制度では、必要な場面で支援を受けつつ、自らの意思で生活を送ることが可能です。

このように、制度は本人の生活の質を維持し、向上させる役割を果たします。

 

家族にとっても法定後見制度を利用するメリットは大きく、高齢の親や親族の判断能力が低下した場合、家族だけで対応するには限界があることが少なくありません。

この制度を利用することで、専門的な知識を持った後見人や補助人が支援を提供し、家族の負担を軽減することができます。

また、裁判所が関与することで公正性が確保されるため、家族間でのトラブルや不安が減り、穏やかな環境を保つことにもつながります。

 

 

まとめ

 

法定後見制度は、本人にとっても家族にとっても将来にわたる安心感を得られる制度です。

特に認知症など進行性の疾患に直面している場合には、早めに制度を利用することで予期せぬ事態にも柔軟に対応できる準備が整います。

法定後見制度の利用は、本人と家族の双方にとって多大な安心と利便性をもたらします。

補助、保佐、後見のいずれを選ぶにしても、それぞれの状況に適した支援を提供し、社会の中で本人が自分らしく暮らし続けられる環境を作る重要な手段となります。

この制度を活用することで、高齢化社会におけるさまざまな課題に対処しやすくなるのです。


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