障がいのある子をもつ親の悩み

【50代女性】
事案:財産管理、後見、相続
相談内容
ある親御さんから相談がありました。
私には息子が一人いるが、知的障害がある。
息子は一人では生活できないので、身の回りの家事や世話をしている。
私ができる間はいいが、私もだんだん年を重ねてきたので、もしも自分が認知症になったり、動けなくなったりして息子の世話ができなくなった時のことを不安に思っている。
自分が亡くなった後に残される息子のことも心配。
早めに考えておきたい。息子は財産管理もできないとのことでした。
対応
「親なきあと問題」といわれる問題です。
これは、病気や障害のある方で、一人では金銭管理や意思決定が出来なかったり、身の回りのことで世話が必要だったりする場合、日常的に支援をしてきた親を失った後に生活全般にわたる課題に直面してしまうことを指します。
親御さんとしては、息子さんとの日々の暮らしで精一杯の中で、息子さんの将来のことに不安を持ちながらも、何からどのように進めていっていいかわからないといった状況になり、必要な手立てがつい先送りになってしまうことがあります。
息子さんとしても、自らで考え動いて支援体制を築くことは非常に難しく、限界があります。
この場合、親御さんの状況(年齢や健康状態、財産状況や経済状況、親族関係)をふまえつつ、息子さんの病気や障がいの状況に応じて、生活面、経済面、住まいの問題、就労支援、施設や介護サービスの利用など多岐にわたる支援体制を考える必要があります。
財産の管理や生活資金の確保も重要です。
これらの問題について、とくに親御さんが元気な間に早い段階で対策を考えておくことが大切ですので、弁護士などの専門家にできる限り早く相談することが重要になります。
結果
弁護士はまず、親御さんの状況と息子さんの状況、お二人を取り巻く生活環境などについて、さまざまな角度から詳細にお伺いしました。
息子さんの将来についての親御さんの希望もお伺いしました。
そのうえで、親御さん、息子さんのそれぞれの観点から、対策を考えていきました。
まず、親御さんの取りうる対策としては、生前と亡くなった後に分けて考え、生前においては、将来の判断能力の低下に備えて任意後見人になることを信頼できる親族や専門家に依頼すること(任意後見契約)や、財産の管理を依頼すること(財産管理委任契約)を中心に検討しました。
親御さんは任意後見人に息子さんへの生活費の支払や息子さんの法定後見人の選任申立てを依頼することもできます。
親御さんはご自宅を所有していましたので、息子さんへご自宅を承継するタイミング(生前に譲渡するのかなど)も検討しました。
その他にも、民事信託制度の利用、生前贈与、財産の整理なども検討しました。
親御さんが亡くなった時には、葬儀の手配や納骨、残置物の処分、行政等への届出、死亡に伴う各種事務的な手続きが必要になります。
息子さんがそれらを自力で行なうことは現実的には難しいでしょうから、息子さんに代わってそれらを執り行ってもらえる人を見つけておくこと(死後事務委任契約)を検討しました。
さらに、相続手続、つまり、親御さんの財産の引継ぎや、ときに相続税の申告が必要になることもあり、これらは、複雑かつ専門的なことが少なくありませんので、生前に遺言書を作成し、遺言の中で、遺言執行者を信頼できる専門家になってもらい、財産の承継をスムーズに執り行なってもらうことを検討しました。
いずれにしても、後見人等第三者にさまざま重要な事柄を託すことになりますので、親御さんが元気な間に、信頼できる第三者を見つけ、第三者と親御さん、さらには子との間の信頼関係や協力できる関係を築いておくことも大切です。
次に、息子さんのサポートとしては、後見制度を利用することを考えました。
後見人には、息子さんが亡くなる時まで支援してもらうことができます。
第三者後見人は親のように直接子を介護するわけではありませんが、子の最善を考えて、ヘルパーさんの手配、作業所とのかかわりや施設入所の検討、医療機関との契約、行政機関の諸手続き等司令塔となって動いてくれます。
子の後見人は親の面倒まではみてくれません。
しかし、親の任意後見人を子の後見人候補者とする申立てをすることはできますから、信頼できる人に親と子双方の将来を託すことも選択肢の一つになります。
弁護士から
「親なきあと問題」は、障害のある子の生活全般にわたるさまざまな課題に対してきめ細やかに手を打っていくことで、子が将来安心して過ごせるようにしていきます。
それだけにとどまらず、親御さん自身も負担が軽減され、人生を安心して歩むことにもつなげていきます。
そのためには、さまざまな方法を駆使し、組み合わせて最善の支援体制を築くことが必要になり、それは専門性が高いことから、できる限り早い段階で、弁護士などに相談することが非常に大切であるといえます。
※これらの解決事例は実際に当事務所での取扱事案ではありますが、個人や事案の情報を保護する目的で一部変更をしている個所もあります。